医療機器市場は急速な市場成長に伴い、医療機器業界では優秀な人材の確保がますます重要になっています。
特に薬事担当者やエンジニアの不足が深刻化しており、企業は効果的な採用サイトを通じて求職者に魅力を伝える必要があります。
ここでは、医療機器業界の現状と今後の人材ニーズに対応するための採用サイトの重要性について考察します。
医療機器の景気動向考察
株式会社グローバルインフォメーションがおこなった、市場調査レポート「医療機器市場:シェア分析、業界動向と統計、成長予測(2024~2029年)」によると、
2024年には医療機器市場の規模が6,370億4,000万米ドルになると見込まれ、2029年には8,930億7,000万米ドルに達するとの調査を発表しました。
このことから、景気は今後さらに上昇すると予測できます。
COVID-19の影響と市場の現状
COVID-19のパンデミックは医療機器市場に大きな影響を与えました。パンデミックの影響で多くの非緊急手術や選択的な医療手続きが延期または中止され、特に放射線治療の件数が約80%減少しました。
しかし、一方で個人用保護具(PPE)や人工呼吸器などのCOVID-19対策に必要な医療機器の需要は急増しました。
慢性疾患の有病率の上昇、高齢化、医療技術の進歩などが市場の成長を支えていることがわかります。
高齢者は心血管疾患(CVD)などのリスクが高く、これに伴い心臓手術や状態の定期的な監視が必要となるデバイスの需要が増加しています。
また、糖尿病患者の増加により、ウェアラブルおよびポータブル医療機器の需要も増加する見込みです。
COVID-19の影響を受けつつも、医療機器の需要は回復基調にあり、今後も技術革新と新製品の投入が市場の成長を後押しします。
2025年問題と日本の医療業界(医療機器メーカー)への影響
2025年問題とは、日本が経験したことのない超高齢化社会に突入することで生じる多くの課題を指します。この問題の中核は高齢化にあります。
試算によると、2025年には高齢者(65歳以上)が3人に1人、後期高齢者(75歳以上)が5人に1人になるとされています。また、総人口は700万人減少すると予測されています。
特に懸念されるのは、非労働人口の急増です。15歳から65歳までの労働人口は7000万人程度まで減少する一方、65歳以上の非労働人口は3500万人を突破すると見込まれています。
このため、深刻な人手不足が発生することが予想されます。
医療費の増大と社会保障制度への影響
国立医療福祉大学の高橋教授によると、2025年には認知症患者が1200万人に達する見込みだそうです。
これは、人口の10人に1人以上が認知症を患うことを意味し、他の疾病や高齢による医療機関の利用もさらに増加するでしょう。
労働人口が減少する中で、医療費の増大が社会保障制度に大きな負担をかけ、制度が成り立たなくなる可能性が高まります。
医療費におけるコスト感覚の変化
社会保障制度が崩壊すると、個々の医療費負担が増加し、高額医療を受ける人が減少するでしょう。
また、医療分野におけるコストダウンが求められ、適切なコスト管理ができなければ医療サービスの提供自体が困難になる可能性があります。
現在のコスト感覚で医療機関が経営を維持できるのは、現行の社会保障制度があるからです。
医療機器業界にとってはビジネスチャンスになりうる
2025年問題は医療機器業界にとって大きなビジネスチャンスでもあります。
高齢化社会に対応するための新しい医療機器やサービスが求められる中、イノベーションの機会が広がっています。
例えば、遠隔医療システム、介護ロボット、認知症ケア機器などが需要を見込まれます。
これから、高齢化に伴う医療需要の増加、人手不足、医療費の増大と社会保障制度の圧迫など、複数の課題が同時に押し寄せます。
医療機器業界にとってはこれをビジネスチャンスと捉え、新しい技術やサービスの開発に注力することで、医療の質を維持しつつ課題に対処することが求められます。
参照:医療機器:市場シェア分析、業界動向と統計、成長予測(2024~2029年)

医療機器業界の人材確保に関する課題と対策
人材確保における4つの課題
1. 薬事及びエンジニアの人材不足
医療機器の開発と製造に不可欠な薬事担当者やエンジニアが不足しています。
これは「やりたいことは沢山あるけれど、やれる人がいない」という現状を生み出しており、人材育成が急務です。
専門分野における教育プログラムの充実を図るため、企業内研修や外部研修を行うことで人材育成を効率化すると良いでしょう。
2. レギュラトリーサイエンス人材の重要性
医療機器の規制対応を担うレギュラトリーサイエンスの専門家が求められています。
大学や他企業の社員と共に学べる環境を整備し、ネットワークを構築することが必要です。企業としても、これらの取り組みを支援する制度が求められています。
3. 起業人材の不足
アカデミアの研究者が医療機器メーカーを立ち上げる際には、経理や営業などの経営に必要な人材を集める必要があります。
適切な起業人材とのネットワーキングが課題となっています。
4. 医療機関のIT人材不足
医療機関にはIT人材が少なく、製品の保守点検を企業に依存する状況が続いています。
このため、ベンダーロックや高コスト化、標準化の阻害といった問題が発生しています。
医療機関の経営にDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の人材を配置し、ITを根付かせる仕組みが必要です。
参照:経済産業省「医療機器産業を取り巻く課題の事業者ヒアリング結果」
医療機器業界の参考にしたい採用サイト5選
村中医療器
村中医療器は、経営理念や強み、今後の展開などを示しており、会社の思いに共感した求職者が集まりやすいWebサイトになっていると見受けられます。
1ページ1ページが作りこまれており、特に社員の声は文字だけでなく社員自身のバロメーターまでサイトに載っており他のサイトにはない差別化となっています。
1日のスケジュールも載っているので、会社に入ってからの働き方のイメージも付きやすいWebサイトです。
村中医療器 新卒採用サイト (muranaka.co.jp)
ニプロ株式会社
ニプロ株式会社は、社員の声の多さが特徴的な採用サイトになっています。
たくさんの生の声があるため、社員目線での会社の魅力などが伝わりやすく、求職者としては実際に就職した後のイメージも付きやすいのではないでしょうか。
また、企業情報についても詳しく書かれており、数字としての実績も見やすくデザインされているWebサイトです。
株式会社トップ
株式会社トップの採用ページを見ると、一つのページから会社概要や職種紹介、社員紹介、採用についてなど、それぞれのページに移行しやすくなっています。
教育研修制度の種類の豊富さも他社との差別化となっておりエントリーされる一つの要因になっているのではないでしょうか。
採用情報|総合医療機器メーカー 株式会社トップ (top-tokyo.co.jp)
オリンパス
オリンパスは、文章とイラストを交えた充実した内容の採用サイトになっています。
また、採用ページからは決算情報やIR情報のページにも移行しやすくなっているため、求職者にとっては会社選びの安心材料になることでしょう。
サイト内には動画も豊富にあるので、求職者がより多くの会社情報を得やすくなっています。
Sysmex
Sysmexは、新卒採用やキャリア採用だけでなく、障がい者採用も行っていることがわかります。社員の声は20件以上もあり、会社の魅力が伝わる採用サイトになっています。
また、会社紹介には動画が使われているため、会社についてよく理解した上でエントリーしてくれるWebサイトになっているのではないでしょうか。

医療機器業界の採用サイトに入れるべきコンテンツとポイント
1. 会社概要
求職者は応募先の会社がどのような組織かを知ることで信頼感を持ちます。会社概要は、会社の背景、ビジョン、ミッションを示しましょう。
また、会社概要では会社の価値観や文化を伝えることで、求職者が自分の価値観と一致しているかを判断できます。
しっかりとした会社概要を掲載することで、会社のブランドイメージが向上し、求職者に対する魅力が増すため、会社概要はしっかりと記すことが推奨されます。
2.製品情報
製品情報は、求職者が会社の事業内容や市場での位置づけを理解し、自身のキャリアと会社の活動がどのように一致するかを具体的にイメージできるようにするため必要な情報です。
医療機器業界は専門性が高く、製品がどのような技術や知識を基にしているかを理解することが重要です。求職者が会社がどのような製品を提供しているのかを知ることで、事業の全体像を把握できます。
医療機器業界では技術力と革新性が重要な競争要因です。製品情報を通じて、会社が持つ技術力や革新的な取り組みをアピールできます。
技術に興味のある求職者にとって、興味を引くポイントとなります。
3.職種紹介
職種紹介は、求職者が具体的にどのような仕事があるのか、各職種がどのような役割を果たすのか、そして自身のスキルや経験がどのように活かせるのかを理解するために必要です。
この理解があることで、求職者は自身のキャリアと会社のニーズが一致しているかを判断しやすくなり、応募意欲が高まります。
また、具体的な仕事内容が明示されていると、自分のスキルや経験がその仕事にどのように役立つかをイメージしやすくなります。
職種紹介を通じて、各ポジションでのキャリアパスを明示することもできます。これにより、求職者は長期的なキャリアプランを描きやすくなり、会社での成長の機会に対する期待が高まり、働く動機づけにもつながります。
4.社員の声
社員の声は、求職者が会社の文化や実際の働き方を具体的に理解するために必要です。
社員の声を掲載することで、求職者は会社の実際の働き方や雰囲気をより具体的にイメージすることができます。公式の情報だけでは伝わりにくい職場のリアルな姿を知ることができ、入社後のギャップを減らすことができます。
例えば、日常の業務内容、チームの雰囲気、コミュニケーションの方法など、具体的なエピソードを通じて理解が深まるでしょう。
チームワークを重視する文化、イノベーションを奨励する風土など、具体的な事例を交えて伝えることで、求職者の共感を得ることができます。
5.福利厚生とサポート
福利厚生とサポートを掲載することで、求職者が安心して働ける環境を提供する企業であることを示すことができます。
例えば、医療保険や年金制度、育児休暇や介護休暇などの情報を提供することで、企業が従業員の生活を総合的にサポートする姿勢をアピールできます。
医療機器業界は専門性が高く、優秀な人材を確保するためには競争力のある福利厚生が必要です。他社と差別化を図るためにも、充実した福利厚生をアピールすることが重要です。
例えば、自己啓発支援制度や研修プログラム、フィットネス施設の利用、健康診断の実施など、他社にない独自の福利厚生を記載することで、求職者にとって魅力的な企業と映ります。
6.募集要項と応募方法
募集要項と応募方法を掲載することで、求職者が応募に必要な情報を容易に知ることができ、スムーズに応募手続きを進めることができます。
また、詳細な募集要項を提示することで、企業は求める人材像を明確に伝えることができます。これにより、自分のスキルや経験が募集要項にマッチしていると感じた求職者だけが応募するようになり、採用プロセスの効率が向上します。
例えば、特定の医療機器に関する専門知識や技術が必要な場合、それを明示することで適切な応募者を引き寄せることに役立ちます。
7.企業の実績と評価
医療機器業界は高度な技術と品質管理が求められる分野であり、その信頼性は非常に重要です。
企業の実績や評価を掲載することで、求職者はその企業が信頼できるかどうかを判断する材料とすることができます。
特に過去の実績や受賞歴、顧客からの評価などを示すことで、企業の信頼性を高めることができます。
特に新卒や若手の求職者は、企業の実績や成長性に興味を持ちます。過去の実績や業界内での評価を示すことで、求職者はその企業に魅力を感じ、応募意欲が高まる可能性があります。
採用サイトにはこれらのコンテンツを取り入れエントリーの増える採用サイトにしてみてください。
エントリーが増えるサイトのまとめ

超高齢化社会の到来とともに、医療機器業界は大きな成長機会を迎えていますが、人材不足という課題も抱えています。
効果的な採用サイトを構築することで、企業は求職者に自社の魅力を伝え、優秀な人材を確保することができます。
具体的には、会社概要、製品情報、職種紹介、社員の声、福利厚生とサポート、募集要項と応募方法、企業の実績と評価などを充実させることが重要です。
医療機器業界における人材確保の課題に対応し、技術革新を推進するためにも、採用サイトを通じて企業の強みと魅力を効果的にアピールし、求職者の関心を引きましょう。