日本の高齢化が進む中、介護業界はますます重要な役割を果たしています。現在、要介護認定者数や介護サービス利用者数が急増しており、介護保険総費用も年々増加しています。
2025年には、団塊の世代が75歳以上となり、後期高齢者人口が2,180万人に達することからも、さらなる需要の拡大が見込まれています。
この記事では、介護業界の最新動向や課題、働く人々の声を紹介し、エントリーされる採用のコンテンツやポイントを解説します。ぜひ、ご参考ください。
福祉・介護業界の景気動向考察
高齢化の進展とともに要介護認定者数・介護サービス利用者数は急速に増加しています。
また、高齢者人口は今後も増加すると予想され、介護サービスの需要が拡大することは確実です。
厚生労働省によると、2019年度の介護保険総費用は、前年度比3.5%増の10兆5,095億円であり、2年連続で10兆円を上回りました。
厚生労働省の調べによると、2021年度の介護保険総費用は、前年度比2.3%増の11兆0,291億円でした。前年度から2,508億円が増加したことで4年連続の上昇、ついに大台の11兆円を記録しました。
サービス別では、介護サービスが同2.3%増の10兆7,494億円、介護予防サービスは3.4%増の2,797億円となり、介護サービスのみで10兆円を突破しています。
2025年には「団塊の世代」すべてが75歳以上となり、後期高齢者人口は2,180万人に達すると推計されています。高齢者人口の増加に伴い介護業界の拡大も見込まれており、今後もさらなるニーズの増加と拡大が想定されています。
福祉・介護業界で働いている人口推移

厚生労働省は7月9日、介護職員は近い将来必要になる介護職員数を発表しました。
2019年度時点で介護職員として働いていた人数(約211万人)を基準として、2023年度には22万人ほど積み増した約233万人が必要になるとしています。
さらに、2025年度では32万人増の約243万人、2040年度に約69万人増の約280万人が必要になると見通しています。
都道府県別の介護職員不足数の将来予測
今回、厚労省は将来必要になる介護職員の人数のほかに、現状の介護職員の増加ペースが続いた場合の23年度、25年度、40年度各時点の予測人数を都道府県別に示しています。
各都道府県における必要人数と現状の増加ペースが続いた場合に不足人数の予測が多いのは以下の自治体です。


福祉・介護志望の人が求めている会社像
令和2年度に行われた厚生労働省「潜在的福祉人材に関する調査」による調査結果による福祉・介護志望の人が求めている会社像を紹介します。
転職者が福祉・介護業界に転職して良かった部分とは

多くの転職者がどのような点で満足しているのかというと、
- 勤務時間や労働環境がよくなった – 273件
- やりがいがある、仕事が楽しい、豊かな生活を送れる – 203件
- 福祉や障害について知識・技術が向上した – 139件
- 収入が増えた、経済的に安定した – 121件
- 人間関係がよい、新たな出会いがある – 100件
- 経験を活かせる – 15件
- その他、特にない分からない – 52件
という結果になりました。
それぞれの詳しい内容をご紹介します。
1.勤務時間や労働環境の改善…273件
最も多くの人が挙げた良かったところは、「勤務時間や労働環境が良くなった」ことです。具体的には以下のような点が挙げられています。
- 規則正しい生活ができるようになった
- 残業が減り、定時で仕事を終えられるようになった
- 前の職場より休みが取りやすくなった
- 家庭の時間が増え、子供の予定に合わせられるようになった
- 通勤が楽になった
これらの点から、介護福祉業界への転職がワークライフバランスの改善に大きく寄与していることがわかります。
2. やりがいや楽しさ、豊かな生活…203件
次に多かったのが、「やりがいや楽しさ」です。多くの転職者にとって仕事のやりがいや楽しさは魅力的と感じられていることが分かりました。例えば下記のようなやりがいや楽しさがあります。
- 仕事に対するやりがいを感じられるようになった
- 利用者とのコミュニケーションが楽しい
- 新しいことに挑戦でき、日々充実した生活を送れている
- やりたかった仕事ができた
- 社会の役に立っていると実感できる
特に、利用者から感謝されることがモチベーションとなり、仕事の楽しさを実感している人が多いようです。
3. 知識・技術の向上…139件
転職を機に知識や技術の向上が図れる点も評価されています。
- 障害福祉の知識が身についた
- 色々な制度を学ぶことができる
- 障害者への理解が深まった
- 資格を取得する機会が増えた
このように、福祉の分野で働くことで、専門的な知識を習得し、スキルアップにつなげることができる点が魅力と感じています。
4. 収入の増加、経済的安定…121件
収入面でも改善が見られたとの声も多くあります。
- 給与がアップした
- 賞与が出るようになった
- 安定した収入が得られる
- コロナ禍でも仕事が安定している
経済的な安定を求めて転職を決意する人にとって、これらの点は非常に重要です。
5. 人間関係の良さ、新たな出会い…100件
人間関係が良くなったことを挙げる人も多いです。
- 職場内での上下関係があまりない
- 話せる仲間ができた
- 職場の雰囲気が良い
- 人脈が広がった
働く環境が良好であることは、仕事の満足度に大きく影響します。
6. 経験を生かせる…15件
転職前の経験を活かせる点も評価されています。
- 今までの経験が活かせている
- スキルをフル活用できる
これまでのキャリアを活かし、新しいフィールドで活躍できることは大きな励みになります。
介護福祉業界への転職は、勤務時間の改善ややりがいのある仕事、人間関係の良さなど、様々な点で多くの転職者に満足感を与えています。

転職者が福祉・介護業界に転職して良くなかった部分とは

一方、転職者が転職して良くなかった部分のアンケートでは
- 勤務時間や労働環境が悪化した…191件
- 収入が低い・減った…129件
- 人間関係がよくない…73件
- 福祉業界・事業所に対するとまどいや不信・不満…64件
- 知識不足を感じた、仕事を覚えるのが大変だった、教育・研修が不十分だ…38件
- 思っていた仕事と違った、業務内容が大変だ…36件
- 経験や資格を生かせない…11件
- やりがいがない、成果がわかりにくい…7件
というような結果になりました。
それぞれの詳しい内容をご紹介します。
1. 勤務時間や労働環境が悪化した…191件
多くの人が勤務時間や労働環境の悪化を挙げています。具体的な問題点としては以下が含まれます。
- 仕事量が多い
- 人手不足で忙しい
- 休憩時間の取りにくさ
- 休みがとりにくい
- 残業が多い
- 定時に帰れない
- 時間・休日に関係なく電話での対応をせまられることがる
- 夜勤があり規則正しい生活ができない
- 休みが不定期で、予定が立てにくい
- 自分の時間が少なくなった
- 家族と休みが合わせづらい
- 自宅から遠いので通勤が大変
- 精神的に疲れる
- 気持ちに余裕がなくなった
- 体力的にきつい
これらの点から、勤務時間や労働環境の重要性がうかがえます。
2. 収入が低い・減った…129件
2番目に多かったのは、収入面での不満です。
- 給与が低い
- 給与面で覚悟はしていたが、生活するのにギリギリであること
- 大変な仕事なのに、給料は安いです
- 昇給がないこと
- 月のシフトの夜勤の有無で給与に3.4万円の差が出る
3. 人間関係がよくない…73件
職場の人間関係についての問題も多く挙げられています。
- 人間関係があまりよくないと感じた
- 人間関係が最悪なところでした
- 施設という閉鎖的空間での人間関係の難しさ
- 前の職場より人間関係が難しい
- 同期がいないので相談しにくいこと
- 転職者特有の困りごとや違和感を分かってもらいにくいこと
- パワハラをする人がいた
4. 福祉業界・事業所に対するとまどいや不信・不満…64件
業界文化や事業所の方針についての不満も見られます。
- 雰囲気が独特
- 業界文化や社内ルールがわかりにくいこと
- 法人の考え方と自分が大切にしてきた事が合わない
- 意見を言える機会・場が無い
- 考え方に固定概念が強く柔軟性に欠けることが多い
- 事業所の方向性が見えない
- 利用者さん優位ではない支援を見ると疑問がわきます
- 稀に障害者に対し差別的な発言をされること
5. 知識不足を感じた、仕事を覚えるのが大変だった、教育・研修が不十分だ…38件
未経験者にとっての学習や教育面の課題も挙げられています。
- 未経験なので、業務の習得に苦労した(苦労している)
- 専門用語などが、なかなか理解や覚えられず難しく感じる
- 必要な知識の幅が広すぎる
- 新しい知識や環境になじむことが大変
- もう少し仕事内容を明確に教えて欲しいです
- 人材教育システムが成り立っていない
- 職員に対しての育成
- フォローが少ない
6. 思っていた仕事と違った、業務内容が大変だ…36件
期待していた業務内容と現実のギャップに苦しむ声もあります。
- 思った仕事内容と違う事・仕事に対しての楽しさの減少
- 排泄業務が辛かった
- 人を相手にする事は難しい
- 利用者の他害で怪我をすることがある
- 利用者さんとの意思疎通が難しい
7. 経験や資格を生かせない…11件
前職の経験や取得した資格が活かせないという不満もあります。
- 前職経験があまり活かせないこと
- 思っていたよりも自分の持っている資格をいかす機会が少ない
- 自分の得意分野が発揮しにくい
8. やりがいがない、成果がわかりにくい…7件
やりがいや成果が見えにくいという点も指摘されています。
- まだ、以前の仕事よりやりがいを見つけられない
- 成果が数値として見えづらいところがあること
これらの情報は、介護福祉業界への転職を検討している方々にとっての重要な判断材料となるでしょう。
特に、件数の多かった勤務時間や労働時間の魅力を採用サイトに反映させることで、求職者を引き付ける要素となる可能性があります。
企業などから福祉への転職者が増えるためには何が必要か

同アンケート内の「企業などから福祉への転職者が増えるためには何が必要だと思いますか?」という質問では、全体の約80%の人が「賃金を上げる」ことが必要だと回答しました。
また、「福祉の仕事に関する具体的な情報、就職先の情報」や「福祉のイメージアップ」も必要だという意見が多く、より採用サイトに詳しい情報を載せることやイメージアップにつながるデザインにする必要性があると考えられます。
「その他」の主な内容としては、
- 中途採用者の待遇改善
- 子育て世代にも働きやすい環境を整える
- 下手なイメージアップはかえって福祉は大変と言う認識を持たれる。営業が大変で はないと謳う企業は無いのと同じ
- 上辺だけではない職員の待遇や仕事内容を具体的に説明する。転職用の説明 に現実味があった方が信用性があり、離職者も少なくなる
- 福祉業界で働くことのメリット、デメリットを見えるようにする
- 実際に働いている人の現状を知ってもらう。
- 個人の趣味などを活動を通して障碍者と共に体験でき、地域貢献につなげられる という楽しさを伝える
- 福祉そのものの認知度を高める
- 受け入れる側の意識改革 ・働く人材の質を上げる
- キャリアアップや研修制度のしっかりした明示
- 入職後の研修の受講や資格取得のための支援
- 資格、年齢を問わず本当に仕事を探している人に向けて求人を出す
- 他業種の経験、知識が活かせる場面がある事を具体例を挙げてアピール
以上のことが、福祉・介護業界に求めるものとして、挙げられました。
企業によって改善できる部分と難しい部分がありますが、「業務に関する具体的な情報」や「研修・資格取得のためのサポート」などあらかじめ転職活動の際に知っておきたい情報を開示しておくことは、選ばれる企業となるためには必須事項となりそうです。
また、入社前と後で大きな差がないようにすることも重要という意見もあります。
福祉・介護の参考にしたい採用サイト5選
湖山医療福祉グループ
湖山医療福祉グループは外国人スタッフの採用なども積極的に行っており、多様性をとても感じるW採用サイトになっています。
福祉系企業の採用サイトとは少し色が違い、イラストや吹き出しなど、パンフレットのようなデザインでユニークさを感じます。
社宅が完備されており、単身者で地元を離れて働きたいという求職者にも安心感があります。
またスタッフが街中を紹介しており、プライベートでも仙台を楽しめそうという雰囲気が伝わり、ライフワークバランスの充実さを感じさせるWebサイトです。
社会福祉法人愛和会
研修内容とかをPDF資料などでダウンロードできるようになっています。
愛和会は採用サイトではなく、Webサイト内の中にある採用ページで求人を募集しています。
1ページの中で掲載できる情報が限られている中、とてもまとめられており、新人教育、研修制度、資格支援など、人財成長に力を入れていることがわかり、キャリアアップを目指せる環境を連想することができます。
また、ページ内で表現しにくい研修計画や、キャリアステップなどはPDF資料として添付されており、限られた情報量の中で求職者にしっかり自社の魅力を伝えられている採用ページになっています。
社会福祉法人三幸福祉会
三幸福祉会の採用サイトでは「ワークライフバランス」ページを作っているのが特徴的です。
一般的な採用サイトでは様々なページを見て、自分にあった働き方やプライベートを充実させることができるかを判断しますが、求職者の求める情報を考えたページの作成をしています。
特に女性の求職者に向けた内容が多く感じられ、女性の社会進出とキャリアアップを支援していることがわかります。
武田病院グループ
武田病院グループの採用サイトは全体的に「人の温かさ」を感じるコンセプトになっています。求める人財の部分では、
- 「人が好き」な方
- 「縁の下の力持ち」の言葉に共感できる方
- チームワークを重視した仕事をしたい方
- 自分の将来を明確にビジョン化できる方
など分かりやすく、採用サイト内容の画像では、ほとんどの写真が笑顔で温かみのある写真です。
働くうえで職場環境を重視する声は少なくありません。
このようにWebサイト上から働く環境の明るさや温かさを感じることで求職者も興味を引くのではないでしょうか。
SOMPOケア
SOMPOケアは介護業界大手ということもあり、「介護の未来をSOMPOが変える」という志の高いキャッチコピーが印象的です。
この志を体現するための「経営理念」と「求める人物像」も一貫して統一されていて、企業がどう有りたいのか採用サイトを見ているだけで想像できます。
職種の種類、業務内容、エリアのほか、施設や業種ごとに詳細に募集要項が分かれているので、自分の条件にあっているか採用サイト上で判断することができます。
また、「SOMPOケアで働く」というページでは「女性の活躍応援」「職場環境」「キャリアプラン」「研修制度」「福利厚生」など働く人にフォーカスした内容が充実しており、人財を大切にしている企業だとわかる構成が特徴的です。
福祉・介護業界の入れるべきコンテンツとポイント
1.企業紹介ページ
企業の理念や特徴のほか、業務内容などがわかるページです。
企業が何を目指して、どのような特徴があるのかを見せることは採用サイトでとても重要です。
なんのために仕事をしているのかを理解してもらうことで、勤務時間や労働時間が悪くなってしまった場合でもやりがいを持って仕事をすることができます。
2.給与面
募集要項で特に見られる部分は給与面です。
初任給や月給の部分だけを表示すると業務内容と比較をされてしまうかもしれません。
可能であれば、基本給の他に昇給・賞与・手当などを細かく記載することで、将来の自分を想像しやすいのではないでしょうか。
3.スタッフインタビュー
スタッフインタビューはそこで働いているスタッフの生の声として求職者にメッセージを届けることができます。
仕事へのやりがいやプライベートなど、実際に働いている人のワークライフバランスを表現することができたり、人間関係や教育制度などについても企業側ではなく、働いている人の目線で伝えることができます。
4.採用条件
働きやすさ、人間関係などは仕事を選ぶうえでとても大きなポイントです。
企業がどのような人材を採用したいかで、企業の雰囲気や環境を作ると言っても過言ではありません。
他業種から転職してくる方も多い業界なので、採用条件の中にどのような人材を求めているかなどをしっかり明記して伝えましょう。
6.休暇制度
休暇制度は仕事とプライベートを両立したい求職者にはとても重要視されます。福祉業界は人手不足で休みが取りにくいという企業も少なくありません。
休暇制度を設けることで、スタッフのリフレッシュやストレスの解消、また、プライベートが充実することによりやりがいにもつながるので、休暇制度についても具体的に記載しましょう。
7.キャリアアップ制度
仕事のやりがいは充実した職場環境や人間関係、仕事の楽しさの他に、向上心と出世したいいった自分の「欲」が関わってきます。
将来自分のキャリアを考えている人は、どのくらい頑張れば自分の理想に近づけるか考えるかを考えるものです。
キャリアアップに関する内容を掲載することで求職者の興味をそそる可能性が上がります。
また、資格取得支援や勉強会を実施している企業など、教育に力を入れている企業も増えています。
8.職場環境
自身が働く環境が分かりやすく写真で掲載されていたり、施設のスタッフとの交流や、働いているシーンをイメージさせることはとても重要です。
自分がその場所で働きたいか、スタッフの人柄や働く姿を見て、続けられそうか判断するためには重要な指標になります。
エントリーが増えるサイトのまとめ

エントリーが増える採用サイトは求職者が求めている情報を掲載できているかが重要になります。
企業側は自分たちが当たり前だと思っていることが、求職者目線に立つと、当たり前ではなく、その部分の情報がほしいということが多いです。
そのため企業側が発信したい情報と求職者側でキャッチしたい情報には差が生まれ、採用され、入社したときには「なにか違う」という不満が起きてしまうことがあります。
せっかく採用したスタッフがすぐに辞めてしまうことも少なくないでしょう。まずは自社で行っている制度や施策、特徴や強みをまとめて、求職者に伝えられる部分があるか分析してみましょう。