総合商社業界は、世界経済のダイナミックな変動に影響を受けつつも、堅実な成長を遂げてきました。特に近年は、資源価格の急激な変動や地政学的なリスクが収益に大きな影響を及ぼす中で、各企業は非資源分野へのシフトを図っています。
このような動向は、企業の戦略変更や新たな事業領域への投資を促し、多様なビジネスチャンスを生み出しています。
これらの背景から、総合商社における採用サイトの役割がますます重要になっています。
求職者に対し、企業の魅力やビジョン、具体的な業務内容を効果的に伝えることで、優秀な人材を確保するための鍵となります。
この記事では、総合商社の景気動向とそれに伴う採用サイトの重要性について詳しく解説します。
総合商社の景気動向とは
過去10年間の総合商社主要企業の純利益の推移を示したグラフによると、総合商社業界の純利益は2018年から2020年にかけて減少傾向にありましたが、2021年と2022年に大幅に増加したことがわかります。
特に2022年の総合商社6社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商)の純利益の合計は4.5兆円となり、2020年と比較して約4倍の増加を記録しています。
この急増の背景には、世界的な金融緩和やロシアによるウクライナ侵攻の影響で石油や天然ガスなどのエネルギー価格が高騰したことが挙げられます。
資源分野から非資源分野へ変わる
総合商社は、従来から石油や天然ガスなどのエネルギー資源や鉄鉱石などの金属資源を主要な取り扱い品目としてきました。これらの資源は国の基盤を支える重要なものであり、その取引規模も非常に大きいです。
そのため、総合商社はこれまで海外の資源ビジネスに大規模な投資を行い、得られた資源を世界中に販売することで巨額の利益を上げてきました。
しかし、資源分野の収益は資源価格の変動に大きく依存しており、安定的な収益を確保することが難しいというリスクがあります。資源価格が高騰すれば売上は伸びますが、逆に価格が急落すれば大きな損失を被る可能性があります。
実際に、2016年の資源価格の急落により、資源依存度が高かった三井物産と三菱商事は創業以来初めて赤字を計上しました。
さらに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻は追加の不安要素となっています。多くの日本の総合商社、特に三井物産や三菱商事、伊藤忠商事はロシアに進出し豊富な資源を確保してきましたが、経済制裁や戦争の影響により業績に影響が及ぶ可能性があります。
こうした背景から、総合商社業界全体が非資源分野への注力を強化しています。非資源分野とは、原油、石炭、鉄鉱石などの資源分野以外の事業を指し、食料品、機械、住宅、繊維、情報通信事業など多岐にわたります。
これにより、資源価格の変動によるリスクを軽減し、安定した収益基盤を確保しています。
総合商社は資源分野から非資源分野へのシフトを進めることで、将来的な収益の安定化を図っている状況です。
参照:業界リサーチ「総合商社業界の動向や現状、ランキングなど」
総合商社で働いている人口推移

大手総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)のウェブサイトで公開されているIR(投資家向け情報)資料を確認すると、総合商社で働く人は年々僅かに少なくなっています。
例えば、三菱商事の社員数は、2021年3月時点で5725人、2022年3月時点で5571人、2023年3月時点で5448人と推移しています。
三井物産の社員数は、2021年3月時点で5587人、2022年3月時点で5494人、2023年3月時点で5449人と推移していることが分かります。
業界の若手社員は、就活時にどのようなポイントに魅力を感じて志望したのか?
株式会社リクルートが総合商社や専門商社など、商社業界で働く入社1年目から5年目の若手社員に「就活時代に業界の魅力を感じたポイント」について調査した結果をご紹介します。
業界の魅力を感じたポイントは?
アンケート結果によれば、就活時から商社業界を「志望していた」と答えたのは全体の約50%でした。他業界と比べると、最初から商社業界を積極的に志望していた人の割合は比較的少ないことがわかります。
商社を選んだ理由としては「仕事の内容」が最も多く、39.9%でした。次いで「業界への興味・関心」および「働きやすさ・ワークスタイル」が共に28.2%という結果でした。
このことから、採用サイトには仕事内容の記載や、業界についての深堀り、働きやすさやワークスタイルについて記載するとエントリー数が高まると予想されます。
総合商社の参考にしたい採用サイト5選
原田産業株式会社
原田産業株式会社は、挑戦することに重きを置いたキャッチコピー「HARADAが、やらな。」で会社の風潮をアピールしており、会社の想いに共感した求職者がエントリーしてくれる採用サイトになっています。
また、100年の歴史がある会社ということも伝えて求職者目線、就職の安心材料になっているのもエントリーが増える要素となっていることでしょう。
丸紅株式会社
丸紅株式会社は、社員の声がずば抜けて多く、100人もの社員の声を見ることができます。
これにより、会社の透明性ややりがいなどを知ることができ、求職者としてはエントリーする大きな要因となることでしょう。「できないことは、みんなでやろう」のキャッチコピーを体現したWebサイトになっており、求職者を引き付ける一貫性のある採用サイトになっています。
住友商事株式会社
住友商事株式会社は、見やすいデザインで会社の情報を求職者がキャッチしやすくなっています。
また、イベントやメディア情報の掲載もあり、求職者は会社について理解してからエントリーするかどうかを見極めることができます。
これにより、採用後の離職率の低下にも役立つでしょう。
三谷産業株式会社
三谷産業株式会社は、基本的な事業展開や会社の魅力などの情報を抑えながら、事業紹介が詳しく書かれている採用サイトになっています。
事業紹介では、その事業に求めている人材についても追及されており、より会社の欲しい人材と求職者がマッチングしやすくなっている印象です。
兼松株式会社
兼松株式会社は、ファーストビューに動画が使われており、ほかの同業者の採用サイトと比べて動きのあるトップページで差別化がされています。
また、社員の声にも力が入っており細かな文章と綺麗な写真で会社のイメージアップにも繋がるWebサイトになっているのではないでしょうか。
総合商社の採用サイトに入れるべきコンテンツとポイント
1.会社概要
会社概要が詳しく書かれてあると、信頼性の向上、企業理解の促進、応募者の期待値設定、ブランドイメージの強化、に役立ちます。
会社概要は企業の透明性を高め、応募者に安心感を与えます。企業理念やビジョンを共有することで、応募者は企業文化に共感しやすくなり、事業内容を理解することで自分の興味やスキルに合った分野を見つけやすくなります。
企業の規模や実績を知ることで、応募者は現実的な期待を持つことができ、入社後のミスマッチを防げます。これにより、応募者は自分がその企業でどのように貢献できるかを判断しやすくなり、選考プロセスもスムーズに進行します。
2.採用情報
採用情報が明確に記載されていることで、応募者の不安解消、期待値の調整、効率的なエントリーの促進に役立ちます。
具体的な採用情報を提供することで、応募者は自分の適性や応募プロセスを理解しやすくなり、安心して応募することができます。また、詳細な情報により、応募者は現実的な期待を持ち、入社後のミスマッチを減らすことができます。
3.社員の声
社員の声があると、求職者は実際の職場環境や業務内容をリアルに感じ取ることができます。
企業の説明だけでは伝わらない職場の雰囲気や日常の業務の具体例を知ることで、応募者は自分がその職場にフィットするかどうかを判断しやすくなる効果も期待できます。
また、社員の経験談や考え方から、企業の価値観や文化も伝わります。これにより、応募者は企業がどのような理念や働き方を大切にしているかを理解でき、自分の価値観と合致するかを見極めることができるでしょう。
実際の社員がどのようにキャリアを積んできたのかを示すことで、応募者は自分の将来を具体的にイメージできます。さまざまな職種やキャリアステージの社員の声を紹介することで、多様なキャリアパスがあることも伝えることができます。
4.職場環境
職場環境の情報があることで、応募者は自分が働く場所や条件を具体的にイメージできます。これにより、未知の環境に対する不安が軽減され、安心して応募することができます。
また、職場環境には、企業文化や価値観が反映されます。例えば、オープンなオフィスレイアウトやリモートワークの制度、チーム活動の様子などを紹介することで、応募者は企業がどのような働き方を重視しているかを理解できます。
これにより、自分の価値観と合う企業かどうかを判断しやすくなり、求職者の想いとマッチすればエントリーへとつながります。
魅力的な職場環境は、企業の強力なアピールポイントにもなります。例えば、最新の設備が整ったオフィス、リラックスできる休憩スペース、フレキシブルな働き方を推進する制度などを紹介することで、応募者の関心を引き、エントリー意欲を高めることができます。
5.業務内容とプロジェクト紹介
業務内容とプロジェクト紹介があることで、求職者は具体的な仕事内容や企業の実績を理解し、自分のキャリアにどのように役立つかを判断することができます。
プロジェクト紹介を通じて、企業がどのような大規模で重要なプロジェクトに関与しているかを示すこともできます。これにより、企業の信頼性や実力をアピールし、求職者に対する企業の魅力を高めます。
魅力的なプロジェクト紹介は、応募者にとってのやりがいと挑戦を示すことができます。新しい市場開拓や大規模インフラプロジェクトなど、具体的な挑戦の場を提示することで、意欲的な人材の獲得に役立つでしょう。
6.福利厚生
福利厚生があることで求職者の興味と関心を引くことができます。
優れた福利厚生(例:健康保険、退職金制度、育児支援、教育支援など)が提供されていると、求職者は会社に対する魅力を感じ、応募意欲が高まります。
良好な福利厚生は、社員のモチベーションや生産性の向上にもつながります。社員の会社に対する満足度が高いと、仕事に対するモチベーションが向上し、高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。
また、採用サイトに良好な福利厚生が示されていると、会社のブランドイメージが向上します。求職者は、会社が社員の福祉や働きやすさを重視していると感じ、会社に対する好意的なイメージを形成するでしょう。
総合商社は競争が激しい業界です。良好な福利厚生や社内文化があると、企業は優秀な人材を引き付けやすくなります。
これらのコンテンツを抑えて採用サイトを作ることで会社にあった人材のエントリーが期待できるでしょう。
エントリーが増えるサイトまとめ

総合商社業界は、資源価格の変動や地政学的リスクの影響を受けながらも、非資源分野へのシフトにより安定した成長を目指しています。
特に2022年には、総合商社6社の純利益が約4.5兆円に達し、業界全体が大きな飛躍を遂げました。この背景には、エネルギー価格の高騰や世界的な金融緩和が寄与しています。
採用面においては、魅力的な採用サイトの構築が求められています。具体的な業務内容やプロジェクト紹介、社員の声、職場環境、福利厚生などを詳細に掲載することで、求職者に企業の魅力を伝え、応募意欲を高めることが重要です。
総合商社の未来を支えるためには、戦略的な採用活動を行い優秀な人材の獲得に注力していきましょう。